当協会は、1974年に保険医の生活と権利を守るとともに、医療の充実と向上をはかることを目的として設立され、県内の開業医と勤務医の医師・歯科医師約700名が任意で加入し、政治・思想にとらわれない純粋な活動を一貫してすすめております。
協会は設立以来、医療の諸矛盾の根源となっている不合理な診療報酬の抜本的改善の運動を推進しています。
2026年 年頭のご挨拶
明けましておめでとうございます。穏やかなお正月をお迎えのこととお喜び申し上げます。
昨年も大雨などの自然災害が続く一方、米供給量の不足と米価の高騰、備蓄米放出などが県民の食生活と農家の不安に拍車をかけました。加えてクマ被害が外出制限などをつうじて県民の健康や経済活動に大変な悪影響をもたらしました。
さてとどまるところを知らない物価上昇が続く中、医療界はとりわけ厳しさを増し、病院、診療所の深刻な経営危機が明らかとなりました。26年診療報酬の改定を巡っては、10%超の大幅引き上げが経営維持には死活問題という声が保団連をはじめあらゆる医療団体に拡がりました。先月末に明らかにされた2026年度予算案では、診療報酬は12年ぶりに引き上げられ、3.09%増となります。3%を超える引き上げは30年ぶりで、この間、運動を推進してきた各医療団体、関係者、世論の成果だと言えます。ただ経営危機を脱するにはほど遠い改定率で危機的状況を乗り越えるには到底不十分です。OTC類似薬は維新の会が医療保険の対象から外す大改悪を表明。これは断念されたものの薬剤費の4分の1を「特別の料金」として患者に追加負担を求めることが自民維新で決められてしまいました。高額療養費制度は,年間の負担上限を新たに設定することになったものの月負担限度額は引き上げになり、患者負担の更なる増加を止めさせなければなりません。
振り返ると2025年は瞬く間に過ぎました。「新しい戦前」が新語・流行語大賞にノミネートされたのが2023年11月。昨年は戦後80年の節目の年でした。はたして戦後90年、戦後100年という言葉を次の世代が口に出来るかどうか。それほど今の日本は不穏な空気が広がっていると思うのは私だけでしょうか。
昨年夏の参院選挙では物価高騰、裏金問題など政権への批判のまえに自公は過半数割れをしました。一方で、戦前の暗い時代と見まごうばかりの公約を掲げる政党が排外主義と偽情報をネットで拡散させ議席を伸ばしました。安倍政治の忠実な後継者である高市氏は自らの信念をもとに維新の会を味方にアクセル全開で、右に急ハンドルを切っています。攻撃用無人機(ドローン)が戦争遂行に大量に投入されている現在、国中に原発が立地する我が国は1ヶ所でも爆撃されたら結果は火を見るより明らかです。戦争はしてはならない国なのです。朝ドラ「ばけばけ」の主題歌の一節、『日に日に世界が悪くなる』ばかりです。戦争のない日本を若い世代に渡してゆくことこそ、私たちに求められる役目でないかと思います。
本年も会員諸先生の御協力と御指導をあらためてお願い申し上げ、年頭の挨拶といたします。
会長 草彅芳明
開業医宣言(全国保険医団体連合会が1989年に決め、1998年に修正した、これからの医療をより良くする決意をあらわすものです)
わが国の開業医は第一線の医療の担い手として、長年にわたり地域住民の医療に貢献してきた。
いま、日本人の平均寿命は大きく延びてきたが、一方、国民生活をとりまく経済、労働、環境などの急激な変化とその歪みは、成人病の増加はもとよりかつては見られなかった心身の疾患をも生み出し、子供から老人に至るまですべての世代を通じて、健康に対する関心と不安が増大している。
こうした中で開業医師、歯科医師のあり方も問い直され、日常の診療に責任を持つことはもとより、疾病の予防から環境の改善に至るまでその専門的知識、技術による幅広い対応がつよく求められている。
同時に近代民主主義の主権在民、人権尊重の思想は、医療における人間関係、医学の進歩と医療の倫理など新しい課題をも提起している。
これらの期待と要望に応えるためには、患者・住民のもとめるところを深く理解し、常に新しい医学・医術を研鑽して、自らの医療生活を省み創造する開業医の姿勢と努力が不可欠である。
また、わが国は「経済大国」といわれながら、その力が国民には還元されず、逆に国民の努力により築き上げてきた社会保障が、軍事予算拡大やいわゆる「民活路線」の陰で次々に後退させられている。さらに現在、地球的規模での環境破壊や核兵器の脅威など、人類の生存すら危ぶまれる状況も存在している。
私たちはこれらの現実に立ち向かいつつ、21世紀の医療を担う開業医像をめざして、次の通り宣言する。
1.全人的医療
私たちは個々の疾患を重視するのみならず、患者の心身の状態、家族、生活環境にも気を配り、全人的医療に努力する。
2.対話の重視
医療は患者と医師の信頼にもとづく共同の行為である。
患者の立場を尊重した対話によって、患者自らが最良の選択を行えるよう、医師は患者に必要な情報や専門的知識、技術を提供する。
3.地域医療
私たちは住民の身近な存在として、日常診療に責任を持つと同時に、地域の保健、予防リハビリテーション、福祉、環境、公害問題等についても積極的な役割を果たす。
4.医療機関等の連携
私たちは最も適切な医療を行うため、診療機能の交流等を通じ他の医師、医療機関等との円滑な連携に努める。同時に他の医療・福祉従事者の役割を重視し、患者を中心とした緊密な協力関係を保つよう努力する。
5.診療の記録
診療の正確な記録は医師の重要な責務である。
療養等に必要な情報の提供に日常的に努めるとともに、患者からの診療情報提供の求めに誠実に応ずる。
診療情報の提供に際しては、医師の守秘義務を遵守し、患者の秘密と人権を守る。
6.生涯研修
私たちは患者、住民が最高の医学的成果を受けられるように常に医学・医術および周辺学術の自主的な研鑽に努め、第一線医療・医学の創造、実践、発展をめざす。
7.自浄努力
私たちは、患者や地域住民の信頼を失うような医療行為を厳に戒める。
また常に他の批判に耐える医療を心がけ、医療内容の自己および相互検討を行うよう努力する。
8.社会保障
医療を資本の利潤追求の市場に委ねてはならず、すべての国民が十分な医療・福祉を受けられるよう、社会保障を充実することは近代国家の責務である。
私たちは国民とともに社会保障を守り、拡充するため努力する。
9.先端技術の監視
科学技術の急速な発達は人類に多くの恩恵をもたらす一方、その用い方如何によっては生態系の破壊なども懸念される。
私たちは特に人類や地球の未来に影響を与えかねない先端技術に対しては、その動向を監視し、発言する。
10.平和の希求
人命を守る医師はいかなる戦争をも容認できない。
私たちは歴史の教訓に学び、憲法の理念を体して平和を脅かす動きに反対し、核戦争の防止と核兵器廃絶が現代に生きる医師の社会的責任であることを確認する。